こんにちは。
今日はAlteroさんのことをあまりご存知でない方々に、
少しお二人の人となりや工房運営などについてご紹介するためにまいりました。
橋本さんとは、かれこれ10年以上のお付きあいになりますから、
改まってお話しするのはちょっと照れくさいですね…。
お手やわらかに。
さっそくですが、ギターづくりを始められて、どれくらいになりますか?
私も倉田もギタークラフトの専門課程を修了してからこの道に入ったんですが、
最初の頃は楽器のリペアを中心に仕事をしていました。
そのうち、だんだんと楽器づくりも手掛けるようになりましたから、
クラフトの仕事としては、私が約15年、
倉田の方は10年ほど経験を積んできたことになりますね。
リペアや調整に携わっていた期間を入れると、もっと長くなりますが。
世間では、何ごとも同じ仕事を10年続ければ、特に非凡な才能がなくても立派なプロと言われますよね。
そうですね。
世の中には、まったく手探りでギター製作を始められて、試行錯誤しながら現職になったという方もいらっしゃいます。
私たちの場合は、専門学校で基礎から系統立って楽器製作のノウハウを学んだうえで、実践の世界に入ってきました。
言ってみれば、初めからギターやベースを普通にそつなく作れる素地があったわけです。
ただ、独立工房をやっている人間としては、通り一遍のやり方で楽器を製作するだけでは「プロのルシアー」とは言ないような気がします。職人としての基礎があり、それをもとに実践的な技術を身につけて磨いてきたつもりですが、それだけではこの仕事はやっていけません。うまく言えませんが、何らかのプラスα、光るものを持っていなければダメだと思います。おかげさまで、ここ数年の間にプロミュージシャンの方々にも使っていただけるようになりましたが、私たちのそういう姿勢を 評価して下さっているのではないかと、実はひそかに思っていました。
なるほど。Alteroさんの場合、そのプラスαというのは何なんでしょう?
技術というのは、経験にともなって身についてくるし、向上もしていきますよね。
世の中には素晴らしいギターづくりの技を持つ人々が大勢おられると思うんです。
私も倉田も、そのうちの一人に数えられるようになれればいいなと考えていますが、それと同時に、お客さんのニーズをしっかり受け止める能力が問われます。
要するにコミュニケーション力です。これ、口にするのは簡単なんですが、現実には向き不向きがあります。
企業ではなくて個人のお客さんを相手にする仕事というのはどこでもそうでしょうが、カスタムギターのお客さんも本当に色々なんですよ。
ご自分の希望をハッキリ言葉にされる方もいれば、要望はある程度は明確なんだけどもそれを言い表すのが苦手な方もいらっしゃる。
また、現状に何となく不満があるけど、不満な理由がよくわからない。
わからないけど改善したいとか、新しいギターを手に入れてモヤモヤを解消したいという方も結構いらっしゃいます。
そう。そういうお客さんの本当のニーズを引き出して形にする、
形にするだけじゃなくてできればより良い提案をさせてもらい、
それをギターに落とし込む。
その結果、「Alteroに頼んだら予想以上に良かった」と言ってもらいたい。
私は、そういう姿勢がないとプロとは言えないと思うんです。
Alteroでは、ほんとうに一本一本、まじめに丹精込めてギターを作っていますが、それはプロとしては 当たり前のことというか、必要条件なわけで、それだけでは十分じゃないと考えています。
丁寧なコミュニケーションと経験から湧きあがる提案によって、個々のお客さんそれぞれに異なるプラスαを提供するということですか?
そういう言い方もできるかもしれません。
量産品を作っているわけではないので、「これがAlrteroギターの音色だ、特色だ」みたいな、ある種の統一感よりも、ギター一本一本の楽器としての完成度の高さは確保したうえで、それぞれのお客さんのニーズにぴったり寄り添ったギターを作るというのが、私たちの務めだし、存在理由だろうと考えています。小手先の目新しさや特徴出しなどは、あえて追い求めていません。
それよりも、ビンテージタイプの音や操作性を望まれる方にはその通りのギターを作って差し上げられるし、いろいろと面白い機能を盛り込んだハイテクギターをお望みの方には、使って安心できるものなら新しい技術や新製品でも積極的に取り入れてご要望にお応えしています。
実際に「Alteroに頼んで予想以上に良かった」と言ってもらってますか?
すべての方にそう言ってもらえるのが理想です。
でも、有難いことに実際のところ、しばしばそんなふうに言ってもらっていますし、それが励みになっています。
ギタリストなら誰しも、ハイクオリティで自分のニーズに応えるギターを持ちたいと思うでしょうが、価格設定はどうなっているのでしょう?
カスタムギターの製作を謳っているのですから、ハイクオリティは当然の義務だと思っています。先ほども安田が言ったように、弾き手の気持ちになって丁寧にギターを作っています。
ただ、けっして慢心したりせず、技術の面でもコミュニケーションの面でも常にもう一段上のレベルを目指しています。そういう努力をしないなら、信頼される一流工房とは言えません。
私たちには「もうこれくらいでいいや」という思いは今までも、そして、これからもありません。
お値段については、まず品質面から言うと、有名ブランドの同等品質のギターよりお買い得だと自負しています。
Alteroは小さなハンドメイド工房なので、NC工作機械などの設備費や間接費を抑えられるのと、人件費も抑制しているためです。
絶対的な製品価格は、機械を入れて量産されているところや、ある程度量産的な体制で作っておられるところの製品と比べると、残念ながら上回ってしまいます。
ハンドメイド品としてご理解くださればと思います。
ただ最近、Alteroのギターが欲しいんだけど、もう少し安価な製品はないのか?というお問い合わせが相次いでいます。
それで、このたび “Kanade SOUND DESIGN”という別ブランドを立ち上げまして、そうしたお声に応えることにしました。
Kanadeギターは、もちろん私たちがパーツを取り付け、塗装も施し、組み上げて調整している立派なAltero製品なんですが、木材やパーツのグレード、加工面などを工夫してコストを抑え、そのぶん入手しやすい価格を実現しています。Alteroブランドのギターとは性質が異なりますが、実用楽器として不安のない優れた性能と品質を盛り込んでいますので、そちらの方もご愛用いただければ幸いです。
今後、いくつかの楽器店様の店頭でお目見えすると思います。
ところで、アフターサービスはどのようにされているのでしょう?
Alteroブランドのギターやベースについては、永久保証の対象としています。
お客様の都合で壊れたものや1年を過ぎたパーツの故障、それから楽器の配送料などは有償となりますが、それ以外の部分、例えばネックの捻じれや反り、トラスロッドの不具合、通常使用でのボディやネック、指板の損傷などは(フレット交換による微小な破損は除きますが)、保証対象となります。
最後に、安田さんと倉田さんの役割分担などがあれば、聞かせてもらえますか?
二人ともリペア、楽器の製作の両方をこなしますが、どちらかと言うと安田が木材加工や塗装を担当することが多いですね。
私は最終仕上げや調整(セッティング、チューニング)、リペアを担当しています。
どちらもプロとしての確かな技能と責任感を持ってきっちりと仕事をしていますので、ご安心ください。
今日はありがとうございました。
これからも素晴らしいギターを作り続けて、さらに発展されることを期待します。